第1回 京都短編ミステリー新人賞には、日本全国をはじめ海外からも多くの作品が寄せられ、約300作品のご応募をいただきました。
ご応募くださった皆様に、心より御礼申し上げます。

厳正なる審査の結果、以下の作品が受賞いたしました。


受賞作品一覧

大賞

『虫めづる姫君』
黄港佑(川上裕太)
東京都荒川区

▶ 大賞受賞作『虫めづる姫君』全文はこちら

大賞奨励賞

『おもちゃの王様』
樋口漣(上田京美)
京都市右京区

海外賞

『博物館の聖遺物(La reliquia del museo)』
Urraca Primitiva(Jesús Arias Montilla)
スペイン・ハエン

中高生賞

『ABCの色彩』
鵜飼伊月(島村樹)
埼玉県坂戸市

ビジュアライズ賞

『京都異界異聞』
澤田カモメ

『ABCの色彩』
鵜飼伊月


審査員選評

第1回 京都短編ミステリー新人賞では、
島田荘司、山本巧次、望月麻衣の三氏による最終選考を行いました。
各審査員から寄せられた選評の要約を掲載します。

選評全文は以下のページで公開しています。
▶ 審査員選評(全文)


島田荘司

京都という都市は、古来より怪談や伝承と結びつき、多くの物語を生んできました。本賞の応募作を読んでいても、古都の時間の厚みや独特の空気感を生かした作品が多く見られ、その可能性を改めて感じました。

大賞『虫めづる姫君』

ホラーめいた雰囲気をまといながら、千年という時間や古代都市の気配を独自の方法で醸し出した作品です。古典や古語に通じた教養も感じられ、平安京の空気を見事に漂わせています。

謎が小さいという意見もありましたが、物語の流れの中で、貴族女性の猟奇的な行為が後半で衝撃として現れる構造はよく計算されていました。

海外賞『博物館の聖遺物』

スペインの作者による作品ですが、本格ミステリーの構造を果敢に取り入れ、叙述トリックも効果的でした。ただし中心となる殺人装置の説明には疑問点もあり、今後の改稿によってさらに優れた作品になる可能性を感じます。

奨励賞『おもちゃの王様』

作品を生み出した発想そのものに独特の資質を感じました。登場人物の無償の善意が悲劇へとつながる構造は、現実社会の理不尽さを思わせる興味深いものです。

中高生賞『ABCの色彩』

中学生の作品とは思えない読みやすさと発想力があり、今後の成長が大いに期待できる書き手だと感じました。


山本巧次

記念すべき第1回京都短編ミステリー新人賞の審査員として参加できたことを光栄に思います。最終候補に残った作品はいずれもレベルが高く、海外の方の作品も京都の歴史や文化をよく理解して書かれていることに感心しました。

一方で、ミステリーとしての完成度が高くても、「京都である必然性」がやや薄い作品も見受けられました。本賞が京都を舞台とする文学賞である以上、その魅力をより積極的に取り入れた作品を今後期待したいと思います。

大賞『虫めづる姫君』

平安朝の空気感が見事に表現され、冒頭から読者を引き込みます。文章の巧みさは群を抜いており、審査員一致で大賞に選ばれたのも納得の完成度でした。

奨励賞『おもちゃの王様』

作中作と叙述トリックという難易度の高い構成を用いながら、心理劇としての緊張感を見事に描き出した作品です。

海外賞『博物館の聖遺物』

海外の作者による作品ですが、日本の事情にもよく通じており、論理構成もしっかりした印象を受けました。

中高生賞『ABCの色彩』

ライトな文体とテンポのよい会話が魅力で、中学生とは思えない完成度の作品でした。

ビジュアライズ賞『京都異界異聞』

人が消えた京都というディストピア的な世界観が印象的で、映像化した際のインパクトを強く感じさせる作品でした。


望月麻衣

ノミネート作品はいずれもレベルが高く、選考委員であることを忘れ、一読者として楽しく拝読しました。それぞれに異なる魅力があり、読後に強い印象を残す力作ばかりでした。

大賞『虫めづる姫君』

古典『堤中納言物語』をモチーフにしながら独自の視点で再構築された作品で、文学的な完成度と独自性が際立っています。

奨励賞『おもちゃの王様』

犯罪者と作家の心理戦を静かな筆致で描き出し、人間の暗部に迫る描写が印象的でした。

海外賞『博物館の聖遺物』

博物館という閉ざされた空間と古典的トリックを組み合わせた意欲的なミステリーでした。

中高生賞『ABCの色彩』

軽やかな語り口と魅力的なキャラクターが印象に残る作品でした。

ビジュアライズ賞『京都異界異聞』

京都という舞台を活かした独自の世界観が魅力で、エンターテインメント性の高い作品でした。


ビジュアライズ賞 参考コメント

本賞では、映像作品としての可能性にも着目し、実行委員会メンバーによる参考意見を取りまとめました。
以下は、進藤盛延、松平義之、こばやしあきこの三氏による意見を整理したものです。

大賞『虫めづる姫君』は、古典的な雅やかな文体と、虫を愛する姫君という異質な主題が融合した独自性の高い作品であり、人間の本質や生の在り方を問いかける思想性が印象的でした。一方で、文章の密度が高いため、映像化にあたっては物語の核心部分を整理することで、より多くの観客に届く作品になる可能性があると評価されました。

ビジュアライズ賞に選ばれた『京都異界異聞』は、人が消えた京都という異界的状況を舞台にした設定が非常に映像的で、強いビジュアルイメージを喚起する作品として評価されました。異界のルールや世界構造を整理することで、さらに完成度の高い映像作品へ発展する可能性があると考えられます。

『博物館の聖遺物』は、密室トリックと時間認識の歪みを組み合わせた構造が印象的で、論理性とドラマ性を併せ持つ作品として評価されました。

『ABCの色彩』は、「色彩」という発想を用いた推理の着想がユニークで、日常的な会話から事件へと展開していく構成の面白さが評価されました。

『おもちゃの王様』は、人間の「支配欲」というテーマを軸にした思想性の強い作品で、メタ的な構造が印象的な野心作として評価されています。


授賞式のご案内

第1回 京都短編ミステリー新人賞 授賞式を下記の通り開催いたします。

日時:2026年4月5日
会場:京都市国際交流会館

▶ 授賞式詳細


第2回 京都短編ミステリー新人賞

第2回 京都短編ミステリー新人賞の募集は、2026年夏頃開始予定です。
募集要項などの詳細は、公式サイトにて順次お知らせいたします。

投稿者

showky@showky.jp